”革新的な音楽デュオ”サム・ゲンデルとサム・ウィルクス(Sam×Sam)。FRUEにとっての「アーティスト・イン・レジデンス」という表現を見事に体現してきた2人が再び結集する。
ともに先進的な作曲家でマルチなインスト奏者である、サム・ゲンデルとサム・ウィルクス。ここ1年間に発表された作品やライヴでのアウトプットも膨大で、いずれのプロジェクトも素晴らしい評価を得ている。
ゲンデルに関しては昨年末のアートプロジェクトと融合した『AUDIOBOOK』を皮切りに、ジャズとインディ・ロックの間のような不思議なニュートリオ「アース・フラワー」、作曲家エミール・モッセリとの「ハーディ・ボーイズ」など新規の企画を連発。さらにはファビアーノ・ド・ナシメントとのアーカイブ作『The Room』のリイシューと、それに伴う7月のファビアーノとの渋谷WWW Xデュオでの全てを過去にする演奏も記憶に新しい。
この7月の来日ではアルゼンチンのレジェンド、ファナ・モリーナとのコラボレーションや、九州をまわったソロツアーでの1人で重奏を再現する圧倒的という言葉を遥かに超えたパフォーマンスなど活動の密度の濃さ、音楽への没頭がさらなるステージへと到達している印象だ。
一方のウィルクスに関しても精力的なリリースを重ねている。昨年のアンビエント・ポップの逸品『DRIVING』に続き、7月にはクレイグ・ウェインリブ&ディラン・デイとのセッションによって生まれたアルバム『Sam Wikes,Craig Weinrib,and Dylan Day』を発表。ご存知のとおりこの編成は、2022年の『FESTIVAL de FRUE』で実現したサム・ウィルクス・クインテットの延長線にあるトリオだ。
ジャズ、アバンギャルド、アンビエント、エクスペリメンタル・ポップなど複数のジャンルにまたがったゲンデルに対して、ポップフィールドからインプロビゼーション要素の強いグループによる座組など互いの趣の異なる作品を発表しているが、定期的に行われる”サックスとベース”にフォーカスした二人の邂逅は常に興味深い音楽的な展開をもたらしてきた。
出発点となったライヴ・パフォーマンスを収録した「ミュージック・フォー・サクソフォーン&ベース・ギター」とその続編の「モア・ソングス」は2017年にそのプロジェクトがスタート。前回Sam×Samが日本で演奏した2022年の「FESTIVAL FRUEZINHO」で、この際のパフォーマンスの多くが今年5月に発売された『The Doober』に収録された。
2年の空白期間を経て再び集結する「Sam×Sam」今度の彼らが再び”サックスとベース”の基本フォーマットに立ち返るのか? それとも制約を取り払った新たな景色を見せるのかは不明だが”新章”は間違いなくここ日本から始まるのだ。
text by Hideki Hayasaka