道路に立つ白い衣装の Fabiano do Nascimento

Fabiano Do Nascimento

2020年アメリカの公共放送NPRの「NPR Music Tiny Desk Home Concerts」への出演はファビアーノの名を広く世界に知らしめるきっかけとなった出来事に挙げられるだろう。
その際に引用された言葉「アフロ・ブラジリアンジャズ、フォークロア、ボッサ、サンバの融合とそれらを超越した催眠術的サウンド」は、彼の現在の音楽性を表現する実に的を得た言葉といえる。
アフロ・ブラジリアン&ルーツ・サウンドを現代に継承する才能、ファビアーノ・ド・ナシメントは1983年リオ・デ・ジャネイロ出身。
音楽一家に育ち、幼年期よりクラシックや音楽理論などの教育を受けたファビアーノは、12歳からギターを手にして以来この楽器に魅了されブラジル音楽とジャズを独学で研究し卓越した演奏能力を身につけていくことになる。
2000年にLAに移り住みマルチ木管奏者パブロ・カロジェロらとTRIORGANICO(トリオルガニコ)を結成。ブラジル音楽とジャズやヒップホップなどミックスした高い音楽性と共に、イーゴン主催の「Now Again」からのリリースによりごく短命なグループながら音楽通の間でその名が知られることとなった。
ファビアーノの10年近い音の探求と実験精神は、2015年のソロ・デビュー・アルバム『Dança do Tempo』で、いよいよ形となる。一発録音という手法含めパーカッションの巨匠アイアート・モレイラとのコラボレーションが大きな注目を集めたが、師匠と敬愛するカリオカとの出会いから音だけでなく精神的な面でも表現に大きな影響を与えた作品である。
続く2017年の2作目「Tempo Dos Mestres」では、そのスタイルをさらに一歩押し進めバーデン・パウエル、エルメート・パスコアル、エグベルト・ジスモンチといったブラジル音楽の伝説たち名も頭をかすめつつも、現代的で実験性に富んだ演奏を披露した。
2020年には前作のエクスペリメンタル精神に富んだブラジル音楽の黄金時代のサウンド継承を踏襲しつつ、さらに技巧面や豊かな表現力を形にした3作目『Prelúdio』を発表。寡作な印象から一転、EP『Partido Alto』やライブ作品などを活発なリリースを続けている。
Text by Hideki Hayasaka