
1961年フランス出身の作曲家、編曲家、演奏家、プログラマー、プロデューサー、サウンドデザイナー。ファッションデザイナーのソニア・リキエルの息子として生まれ、病院の保育器での過失により生まれつき視覚障害をもったが、幼い頃から独学でピアノを弾き、音楽の才能を発揮しはじめ、特に作曲家ピエール・アンリとの出会いでシンセサイザーにのめり込むこととなる。
楽器の演奏力とインスピレーションの高さから徐々に才能が認められ17歳で初めてレコーディングセッションに参加、1982年には初のセルフ名義のアルバムを発表している。
プログラマーとしてヴァンゲリスやウラディーミル・コスマの作品、演奏家としてスティーブ・ヒレッジやジョン・ハッセル、編曲者としてはサリフ・ケイタ、レナード・コーエンなどのアルバムへの参加が有名だが、リキエルにとって最も重要なコラボレーションのひとつがセネガルの歌手、ユッスー・ンドゥールとの共演だろう。アルバム『Eyes Open』(1992)と『The Guide (Wommat)』(1994)などのヒットアルバムの共同プロデュースと共同作曲を手がけ、キーボード奏者としてワールドツアーにも参加、共同作業は2002年のアルバム『Nothing's In Vain』と続いた。
その他にもブータンのチベット仏教僧・ギュルメ・ラマ師とともにチベットの聖歌を編曲したアルバム『Souhaits Pour l'Eveil/The Lama's Chant』(1994)とその成功を受けて発表された『Rain Of Blessings/Vajra Chants』(2000年)や『Chants Pour La Paix』(2005)など共作はシリーズ化されている。
リキエルの音楽スタイルは、その多様性と電子音楽への革新的なアプローチによって特徴づけられている。セロニアス・モンクのジャズピアノや電子音楽の先駆者ピエール・アンリの影響により、伝統的な楽器と電子楽器を同等の創造的なツールと捉えシームレスに融合することで広大な可能性を探求してきた。その作品は、前述の作品群やプロジェクトのみならず映画やドキュメンタリーのサウンドトラックや、ディオール、ケンゾー、ヴィシーなどのブランドの広告など多岐に渡る。
なお今回は2018年にアルバム『Kangaba-Paris』をリリースし、長年のコラボレイターであるバラフォン奏者・ランシネ゙・クヤテとのデュオ編成。二人の息のあったピアノとヴァラフォンによる、ジャズとアフリカ音楽が交差した奇跡のハーモニーによる演奏となる。
text by Hideki Hayasaka